(四)二人で行うかるた遊び

遊女かるた遊び図(西村重長筆、元文年間頃)

江戸時代中期の絵師、西村重長の肉筆の絵画に、遊女が二人でかるた遊びをしている情景を描いたものがある。西村は西洋の遠近法を取り入れたパイオニアの一人であり、それを用いた遊郭の部屋と、伝統的な日本画の遠近法を用いた風景とを一枚の画面に収める、過渡的な画風の絵や、歌舞伎舞台の「浮絵」を残しているが、その中にこれがある[1]

哥合せかるたを二人で行うのはどういうルールであったのであろうか。普通に考えられるのは、競技者が相対して坐り、下の句札を均等に分けて自分の前に並べ、読み手が読み上げるのに従って並べられた札の中から該当する下の句札を取る、いわゆる源平の遊技法である。だが、西村の絵には、この読み手がいない。画面中央に描かれている第三の遊女は両手ともに懐手であり、読み札を手にしていない。そこでこの遊技法が分からなくなるのである。種々の可能性が頭に浮かぶが、現在のところ、私にはどれか特定の遊技法を指摘することができない。謎の遊技図である。

 

 


[1] 西村重長の「浮絵」について、岸文和「『浮絵新吉原大門口図』の軌跡」(上)(下)、『MUSEUM』No.504、505号、東京国立博物館、平成五年、二二頁、二四頁。同『江戸の遠近法-浮絵の視角-』勁草書房、平成六年。面出和子「『浮絵』に描かれた空間表現について」『女子美術大学紀要』第二十七号、女子美術大学、平成九年、七三頁。