(一)国語教育におけるかるたの活用

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文部科学省は平成二十年(2008)の学習指導要領改定において、新たに〔伝統的な言語文化と国語の特質に関する事項〕の教育として、小学校三、四年生の国語で「ア 伝統的な言語文化に関する事項」として「(ア) 易しい文語調の短歌や俳句について、情景を思い浮かべたり、リズムを感じ取りながら音読や暗唱をしたりすること。(イ) 長い間使われてきたことわざや慣用句、故事成語などの意味を知り、使うこと。」を教育することを求めた。これは、この項目での小学校一、二年生の「(ア) 昔話や神話・伝承などの本や文章の読み聞かせを聞いたり、 発表し合ったりすること」の教育を受けて、小学校五、六年生の「(ア) 親しみやすい古文や漢文、近代以降の文語調の文章にリズムをついて、内容の大体を知り、音読すること。 (イ) 古典について解説した文章を読み、 昔の人のものの見方や感じ方を知ること。」の教育へと繋がるものである。

「指導要領」の解説では三、四年生の教育への要求をさらに敷衍(ふえん)して説明している。長文だが紹介しておこう。「(ア)は、易しい文語調の短歌や俳句の音読や暗唱に関する事項である。短歌の五・七・五・七・七の三十一音、俳句の五・七・五の十七音から、季節や風情、歌や句に込めた思いなどを思い浮かべたり、七音五音を中心としたリズムから国語の美しい響きを感じ取りながら音読したり暗唱したりして、文語の調子に親しむ態度を育成するようにすることが重要である。『易しい』とは、意味内容が容易に理解できるということである。『文語調』とは、日常の話し言葉とは異なった特色をもつ言語体系で書かれた文章の調子のことである。『文語調の短歌や俳句』では、歴史的仮名遣いや古典の語句などが用いられている。教材としては、親しみやすい作者の句を選んだり、代表的な歌集などから内容の理解しやすい歌を選んだりすることになる。各地域に縁(ゆかり)のある歌人や俳人、地域の景色を詠んだ歌や句を教材にすることも考えられる。また、短歌や俳句を自分でもつくってみたいという気持ちをもつように指導することも大切である。実際につくってみることで、よさを実感し、音読することの意義を深く理解することになる。(イ)は、長く使われてきたことわざや慣用句、故事成語などの意味を知り、日常生活でも使うようにすることに関する事項である。『ことわざ』は、生活経験などにおいてありがちなことを述べたり、教訓を述べたりするものである。例えば、『住めば都』、『犬も歩けば棒に当たる』、『急がば回れ』、『石の上にも三年』などがある。『慣用句』は、『道草を食う』、『油を売る』などのように、二つ以上の語が結び付いて元の意味とは違った特定の意味を表すものである。『故事成語』は、『推敲(こう)』、『矛盾(むじゅん)』、『五十歩百歩』などのように中国の故事に由来する熟語である。これらによっては、先人の知恵や教訓、機知に触れることができる。言語生活を豊かにするために、これらの言葉の意味を知り、実際の言語生活で用いるようにさせることが大切である」としている。

この新方針は、小学校の児童に口承文芸を含めた日本文化の伝統を引き継ぐ教育を施そうとするものであり、本来は民の文化であったものを官の側で言い出すことには違和感がないでもないが内容的にはとても有意義である。そして、(ア)の内容は「百人一首歌かるた」や「郷土かるた」の活用により、また(イ)の内容は「いろは譬えかるた」の活用により適切に実現できる。さらに「短歌や俳句を自分でもつくってみたいという気持ちをもつように指導することも大切である」という点は、すでに各地の学校に実践例があるように、「郷土かるた」を鑑賞したり自分で作ったりすることを通じて実現できる。そこで、小学校三年生の国語の教科書に始めて「かるた」と題する文章が登場して、「百人一首」「いろはかるた」が説明され、「郷土かるた」作りが勧められている[1]。カルタ文化の教育と伝承という面では明治前期(1868~87)に学校制度が始まって以来の画期的な変化である。

 


[1] 江橋崇「かるた」『国語三下 あおぞら』光村図書出版、平成二十二年検定済、七四頁。

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