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(三)浮かび上がるのは「ことば遊びかるた」群

鈴木棠三は、晩年に『ことば遊び辞典』[1]を改訂して長大な解説を書いた。それが鈴木の長年の研究の集大成のように思えるが、同書で鈴木が「ことば遊び」として取り上げたものは、なぞ、考え物、やまとことば、地口、しゃれことば、むだ口、無理問答、回文、舌もじり・早ことば、である。駄洒落が回文などとともに「ことば遊び」のジャンルとしてあげられている。こういう研究の視角を持ち、江戸時代の「ことば遊び」の優れた研究者であった鈴木であるのに、残念なことに『翟巣漫筆』の「いろは地口」の記述を「余興のつもりか」と切り捨ててしまった誤りは終生改めることができなかったのである。この誤解をしたときに、「ことば遊び」の研究者としてはよだれが出てもおかしくない、とてもおいしいはずの「ことば遊びかるた」群の豊かな世界から目を閉じてしまったことになる。そのことが、鈴木のいろはかるた文化史の理解を大きく誤らせた。同じく森田も道を誤り、道に迷っている。先行の業績に乏しい領域で、わずかな史料に基づいて考察を進めなければならなかったという研究環境には同情するが、後進を誤らせる端緒を開いたという事実は黙過することができないところである。

 


[1] 鈴木棠三『新版ことば遊び辞典』、東京堂出版、昭和五十六年。