『雨中徒然草』は、次に賭金と計算の仕方に及ぶ。賭金は当事者間での取り決めで定まるが、標準的な例として示されたのは「一角勝負」つまり、一人の賭金額が一分になるものである。その場合、黒石が五十文として十八個、白石が五文として二十個配分される。合計すると一千文、つまり一分である。遊技では、参加者が四人として、一番ごとに各々が白石一個ずつを提出し、それが貯まって黒石二十個、一千文(一分)になれば五十回戦行われたことになり終了して精算に移る。点料はその遊技の場の主催者、点者への謝礼であり、一回白石二個分つまり十文で、五十回戦の合計で五百文になる。これを払ったのち、遊技の諸経費を差し引いて残った金銭を「割返し」、つまり敗者への還元にあてる。遊技に際して「十ヲ一」と言って、十一文以上で上がった時は勝者が十文ごとにさらに石一ツを提出する決めにしておけばそうして貯まった石も併せて割返しの対象となる。また、「投込」と呼ばれるが、どれほど負けても支払いの上限を決めておく場合もある。「一角勝負」の「投込」であれば参加者各人で一分が支払いの上限であり、それ以上は支払われない。割返しも投込も敗者の傷口が過剰に広がらないようにする賭博性の緩和策といえよう。

勝負は、配分された九枚の手札をいち早く投げ尽した者が勝ちで勝ち点の計算に入る。その際に、落絵を開けて役に加える「呼出し」というルールがある。この所作を「尻起し」という。例示されているのは、本来が「團四役、下三二役、青二上りにて」で合わせて八ツであったところ、尻起しが「青馬」で、「落ち」二ツ、「こんてい」二ツ、「三光」一が加わり、「二付」一ツで六ツ増えて合計十四ツになる場合である。どういう場合に呼び出しになるのかは明らかでない。また、ここには「青建」「附廻し」「かんす」等の説明もあるがよく分からない。

勝ち点の計算では、最初に配分された札の良し悪しが極めて重要なポイントになる。百に近い数の手役はそれを示すが、ただ、手札がいかに良くても、それを場に打ち切って上がれなければ点数にならない。逆に言えば、自分の手札が良くないときは、札の投げ出し方に工夫して、点数の高い者の勝ちを妨害し、低いものに上がらせる戦略がとられる。手札の良し悪しという偶然性を超えたゲームとしての戦略が生じて遊技が深くなる。そして、誰かが上がってその勝負が終わると点数を計算し、そこに「折」を加味する。折は点数を何倍にするかの取り決めで、「三折」といえば点数の三倍で計算する。当然、賭博性が飛躍的に高まり、勝負が加熱するので、これは賭博性の昂進策である。

勝ち点の計算の基本は、上りの点数と役の点数の合計である。上りの点数は、普通の札で上がった時は一点、七枚の金入札で上がった時は二点である。「尻起し」は二点が加えられる。

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