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(八)「すんくんカルタ」の紋標「矢」

すんくんカルタの紋標「矢」
すんくんカルタの紋標「矢」
(『うんすんかるた』)

この際、ここで扱ううんすんカルタの図像論とは直接に関係はないが、「すんくんカルタ」の第六の紋標の札の図像について一言しておきたい。この紋標が「矢」であることはすでに紹介したが、その紋標の描き方に変化がある。紋標「矢」での図像の人物は、中国人らしい装いで立つ男性「ソウタ」、箱型の椅子に腰掛ける武将の「キリ」、暴れ馬に乗る武者の「ウマ」では、実戦も可能な武具としての弓と「諸矢」(「一手矢」の「甲矢(はや)」「乙矢(おとや)」)、二本一組の矢を手にしており、他方、中国皇帝風の「クン」、中国人官僚の「スン」、立ち姿の「ウン」、「火焔龍」の「ロハイ」では弓はなく、単に一本の矢だけであり、もはや武具の描写ではなくなっている。このうち「クン」「スン」は矢を手に持ち、「ロハイ」は口にくわえているが、「ウン」だけは身体から離れて単に紋標を表す記号として傍らの宙に浮かぶように描かれている。この「ウン」は、山口吉郎兵衛によって「紋標矢のウンの図様は役の行者とでも云うような数珠を頸に掛け高下駄をはいた白衣の人物になって居り」[1]と紹介されて以来、役の行者と見られている。日本の聖人、仙人が初めて「ウン」の俗神の仲間入りをしたことになる。たしかに役の行者であれば矢を手にするのは不自然である。

結局、「すんくんカルタ」では、現実の人間を描いた絵札では弓道に適う「諸矢」であり、神格の絵札では記号化された一本の矢、中でも「ウン」では体から離して描いたあたりに図像を描いた絵師の問題関心のありようが見えるようで興味深い。


[1] 山口吉郎兵衛『うんすんかるた』、リーチ(私家版)、昭和三十六年、四〇頁。

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