次に、これはミスではなく、嬉しい新たな発見であったのだが、この版木におけるカードの並べ方は、ポルトガルから伝来したカード・ゲームの遊技法、特にトリック・テイキング・ゲームである「合せ」におけるカードの強弱に従っていた。それは近代的な発想で横に並べた神戸市立博物館の「天正カルタ版木重箱」では想像もできなかった構成であった。絵札四枚の版木でいうと、「ソウタ」「ドラゴン」「キリ」「ウマ」の順であり、数札でいうと、紋標「イス」では「九」「八」「七」「六」の版木と「五」「四」「三」「二」の版木であるが、紋標「コップ」と「オウル」では「二」「三」「四」「五」の版木と、「六」「七」「八」「九」の版木である。紋標「ハウ」の数札の版木は失われているが「イス」と同じ順序と考えられる。長い紋標の「ハウ」と「イス」では「九」が」強く「八」「七」‥‥「三」「二」と」なり、円い紋標の「コップ」と「オウル」では「二」が強く「三」「四」‥‥「八」「九」となるのである。

この事実は、さらなるショックを引き起こす。なぜならば、この配列は、天正カルタで行う「カルタ」の遊技がトリック・テイキング・ゲームであったことを示しているからである。後に「読み」と呼ばれるようになったゴー・アウト・ゲームでもなければ、「カブ」になったアディング・ゲームでもない。従来は、ここに示したカードの強弱は、同じくトリック・テイキング・ゲームに用いた、一組七十五枚のカードのうんすんカルタの遊技法に固有の特徴だと考えられていた。それが、天正カルタの遊技法においてもそうだということは、天正カルタとうんすんカルタの結びつきの濃さを示していることになり、「南蛮カルタ」「天正カルタ」「うんすんカルタ」の太い繋がりを感じさせるのである。

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