五 復刻作業の反省 『天正カルタ版木硯箱鑑定書』 2002年7月3日 天 正 カ ル タ 版 木 硯 箱 鑑 定 書 三池カルタ記念館顧問、日本遊戯史学会理事 法政大学教授 江橋崇 最近、東京で、桃山期と思われる天正カルタの版木を用いた硯箱が発見された。以下はその鑑定の概要である。 本品の形状 (1)本品は、1組48枚のカルタを仕立てる版木を用い... 館長
五 復刻作業の反省 (五)批判の背景 山口は、『最後のよみカルタ』の出版以前には、私とはほとんど面識がなかった。それがなぜ突然に牙をむいて吠え掛かってきたのかは奇妙である。それほど深く交際していなかった私にはその理由を判断する十分な根拠はない。ただ、当時、山口が同志社女子大の吉海直人と酒席を共にして、江橋を打倒すれば自分たちが日本一のカルタ史研究者になれる... 館長
五 復刻作業の反省 (四)復元作業批判の登場 この復元作業の完成後しばらくたって、福井県在住の山口泰彦は、著書『最後の読みカルタ』で、私の復元作業への関わりについて批判を書き連ねた。そこで展開された批判の要点は以下の八点に要約できる。 江橋は莫大な浪費をして無意味に版木を復元した。 (二)江橋は復元の用紙選定に際して、現存する滴翠美術館の『天正カルタ』用紙の科学的... 館長
五 復刻作業の反省 (三)「蝙蝠龍」のカルタと「火焔龍」のカルタ このことはさらに、「三池カルタ」の「龍」のカード、その図像の問題に飛び火する。復元「三池カルタ」の「一」のカードには「龍」の図像がついている。それにはヨーロッパの龍の図像に従って蝙蝠のように羽を広げた龍がいる。私はこれを「蝙蝠龍」と呼んでいる。ヨーロッパのカードでも、「龍」のカードは「蝙蝠龍」である。ところが、日本のう... 館長
五 復刻作業の反省 (二)版木上のカルタの配列 次に、これはミスではなく、嬉しい新たな発見であったのだが、この版木におけるカードの並べ方は、ポルトガルから伝来したカード・ゲームの遊技法、特にトリック・テイキング・ゲームである「合せ」におけるカードの強弱に従っていた。それは近代的な発想で横に並べた神戸市立博物館の「天正カルタ版木重箱」では想像もできなかった構成であった... 館長
五 復刻作業の反省 (一)国産初期の「三池カルタ」版木の出現 こうして、「三池カルタ」の復元は完成した。開館後の「三池カルタ記念館」では、やはり来館者の注目はこのカルタに集まり、江戸時代初期のカルタのイメージを明確に伝えることができた。数百万円の高額の費用を要した事業であったが、取り組んでよかったと思っている。 しかし、反省するべき点ももちろんある。最大の反省点は、平成十四年(2... 館長