本日から、日本かるた文化史の近代編を公開します。

第一章から第五章、時期的には明治維新から太平洋戦争の敗戦まで、八十年のかるた文化を追ってみました。最近増えている外国からの来館者の利便も考えて画像を思い切り贅沢に入れました。人々がかるたの遊びで感じてきた喜びや希望、あるいは苦しみや悲しみを汲み取っていただければ嬉しいです。

近代のかるた文化については多くの先人の業績がありますので、ここではそれらと重ならないように、当館の視点、当館の思考を率直に表現しました。特に申し上げたかったのは、近代社会、かるたの世界での「子どもの発見」と「女性の覚醒」です。これまでの「男子」の腕白遊戯という視点に偏ったかるた史の叙述に新しい視座を提示できたでしょうか。

そしてもう一つは、大げさに言えば「かるた遊戯と国家」でして、日本が多くの戦争を経て帝国として成長し、そして破滅に向かったときにかるたはどう対応してきたのかを説明させていただきました。「大日本帝国の標準装備としてのかるた」という見慣れない表現になりましたが、新しい視座には新しい言葉が必要ですのでお許しください。

ここで扱ってきた社会や人々の暮らしは今とは大きく違っています。ですが、その底辺に流れる人々の喜怒哀楽の気持ちは共通で、いつの時代のものでも理解し、共感しあえます。このウェブサイトで、かるたとその遊戯に表されている明治、大正、昭和の人々の思いと触れ合い、歴史を知り、本当の意味での市民の伝統文化を味わっていただければ幸いです。当館がすでに公開している「江戸時代かるた文化の研究」や、今後第六章以降で公開を予定している「第二次大戦後のかるた文化史」ともども、よろしくお楽しみください。

令和二年四月

日本かるた文化館 館長

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