もう一点注目されるのは、平成年間(1989~2019)に入って、花札の四十八枚をすべて制作するのではなく、その中の何枚かに限って制作する場合が増えたことである。一つには、キーホルダー、ストラップ、ワッペン、クリアファイル、マスキング・テープなどに載せるカルタ状の図柄としての活用であり、特にタレントのコンサートなどのプロモーション、参加者への記念品に多用されている。骨牌税、トランプ類税は、免許なしに花札などのカードを制作することを、たとえその一部だけであっても禁止していたが、規制する法律の廃止により、こうした、花札図像の一部を創作する楽しみも芽生えてきた。そこに出現したのが、かるた札をトレーディング・カードの様に扱う新しい遊びである。

こうした花札を世に出す側も、一組四十八枚のカードの何枚かをパーツとして順次に売り出して、一組に完成させるには繰り返し購入するように誘導したり、ガチャで販売する場合にセットを完成させるのに必要なかるた札の中にレア・カードを作ったり、コレクターを刺激してコレクション趣味に訴えるようになっている。ここで市場に登場する花札では、例えば五光役を構成する光り物の札だけ、あるいは猪鹿蝶の役を構成する生き物札だけを制作するなどしているので、それではもちろん、伝来の花合せの遊技は行えないが、それに代わるトレーディング・カード化やコレクション作りという新しい遊戯法ができつつあると言える。こうした部分発行物は無数に存在しているが、ここでは四十八枚がすべて発行されていて、それを使って実際に伝統的な花札遊技が行えるものに限って取り上げているが、当方の整理の都合でそうしているだけであって、部分発行のかるたやそこに込められた作者の思いや技量への評価が低いということではない。

おすすめの記事