三 「ことば遊びかるた」の広がり (八)文字が読めない者も楽しめる「ことば遊びかるた」 日本のかるた遊技には文芸文化の色彩が濃い。しかもそれは平安時代の貴族文化とは違って、一般庶民が楽しめる文化であり、そこには「聖・俗・遊」が渾然として混じり合っている。「聖」なる優雅な和歌なのに、かるた遊技の世界ではいつの間にか「濡れにぞ濡れし色はかはらず」だから川に落ちた小判だとか、「はなより外にしる人もなし」だから天... 館長
三 「ことば遊びかるた」の広がり (七)見立て、もじり、地口、駄洒落こそ江戸かるた文化の粋 本章の冒頭で触れた『ことわざ歌留多』を書いた昭和三十六年(1961)当時、鈴木は「いろはかるた」研究のトップランナーであった。鈴木がもし『翟巣漫筆』を読み誤ることなく、「地口かるた」、ひいては江戸時代の「文芸かるた」「ことば遊びかるた」に関心を持ち情報収集のアンテナを張っていれば、この豊かな江戸のかるた文化を見逃すこと... 館長
三 「ことば遊びかるた」の広がり (六)どっこい生きていた「譬え合せかるた」 すでに本章の冒頭部分で扱ったように、「いろは譬えかるた」は児戯の具であると判断したとき、鈴木はもう一つ大きな誤解をしていた。鈴木は昭和四十八年(1973)刊の『今昔いろはかるた』で、「いろはかるた」の前身は諺をいろは順に整序しないままに収録した「譬え合せかるた」であり、それが江戸時代(1704~89)の終わりにいろは順... 館長
三 「ことば遊びかるた」の広がり (五)意外に少ない旅行のかるたと性娯楽のかるた 江戸の娯楽で盛んだったのが、寺社詣での旅行である。江戸で言えば、近隣の成田詣で、大山詣で、富士山詣でから、善光寺詣で、伊勢神宮詣で、出雲大社詣でなど旅行の理由には事欠かなかった。だが、旅行を主題にするかるたのカードは意外に少ない。古くは「巡禮かるた」などがあったが、その伝統は途絶えた。「東海道五十三次かるた」のカードは... 館長
三 「ことば遊びかるた」の広がり (四)江戸の「いろはかるた」文化の主役 江戸時代に、「いろはかるた」が大人の遊技具として多彩に存在していたとすると、念頭に浮かぶのは江戸の人々の過剰なまでの娯楽世界を構成していた、庶民文芸、芝居見物、寺社詣での旅行、そして性娯楽である。だから、「ことば遊びかるた」があるのならば、同様に、「芝居見物かるた」や「旅行かるた」や「遊郭かるた」の遊技があってもよい。... 館長
三 「ことば遊びかるた」の広がり (三)浮かび上がる「ことば遊びかるた」群 鈴木棠三は、晩年に『ことば遊び辞典』を改訂して長大な解説を書いた。それが鈴木の長年の研究の集大成のように思えるが、同書で鈴木が「ことば遊び」として取り上げたものは、なぞ、考え物、やまとことば、地口、しゃれことば、むだ口、無理問答、回文、舌もじり・早ことば、である。駄洒落が回文などとともに「ことば遊び」のジャンルとしてあ... 館長
三 「ことば遊びかるた」の広がり (二)庶民文芸のかるたも健在 江戸の町には、雑俳、川柳、狂歌、狂詩などの雑文学や、小唄、端唄、新内節、都々逸などの俗曲が溢れており、これらも大人向けのかるたの格好の題材であった。こうしたかるた類については記録もあり、また、何点かはカードも残存している。 これらのカードでは「見立て」「もじり」「駄洒落」が満載で、いかにも「ことば遊び」、口承文... 館長
三 「ことば遊びかるた」の広がり (一)大人好みの「謎なぞかるた」 江戸のことば遊びと言えば「謎なぞ」も主役の一つである。当然、「謎なぞかるた」の遊技があり、それに用いるカードがあってよい。だが、これを長年探したが江戸時代のものは見つけることができていない。蒐集したのは明治年間前期(1868~87)に東京の金寿堂が制作、販売した「なぞなぞかるた」二組である。 そのうちの一組は、カー... 館長