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五 「英語格言和英かるた」

英語諺和英かるた
(制作者不詳、明治前期)

もう一点、紹介したいのは「英語格言和英かるた」(仮題)である。東京の出版業でかるたの出版にも根深であった横山長八の制作したもので、明治二十年代(1887~96)の制作かと考えている。残存するカードから見ると、同一のかるた屋から「英語格言英和かるた」と「英語格言和英かるた」が同時に出版されている。ここで「英語格言和英かるた」というのは読み札に日本語訳された西洋の格言が書かれ、上部にその格言の英文表記が書かれており、対応する取札には、その諺の内容を示す絵といろはかるたのお約束、丸く囲った頭字が描かれ、上部に読み札と同じ格言の英文表記がある。これが日本語訳の頭文字のいろは順に四十八対揃えられているかるたである。頭字が「イ」を例にすれば、「壱銭(いつせん)の才(さい)ありて壱円(いちえん)の愚(おろか)Penny wise pound foolish.(ペネー ワイズ ポーッド フーリッシ)」である。

英語諺かるた
英語諺かるた
(上段:英和かるた、
下段:和英かるた)

 

いっぽう、「英語格言英和かるた」というのは、読み札と取札の構成は「英語格言和英かるた」と同じであるが、採用されている格言が英文の文頭の発音でいろは順に集められている。同じく頭文字が「イ」を例にすれば、「In at one ear and out at another(イン ヱット ワン イーヤ エンド アウト エット ナザー) 耳(みゝ)からみゝへと通(とほ)り抜(ぬ)け」である。西洋の格言を工夫しながら日本語に訳しているが、その趣旨はおおむね正しく訳し出されており、掲載されている英語のスペリングも正確である。発音についてはなお日本語の片仮名表記に苦労しているが、正確な発音に近づけようとする努力も窺われて、日本における英語教育の急速な向上がよく理解できる。

この時期には、以前の外国語かるたのように自然や物品の名称を翻訳するだけのものから大きく進歩して、英文の翻訳が題材になっており、短文で理解が容易なことも影響したのか、西洋の格言を日本語化するものが多い。このかるたもそうしたものの一例である。その内容は次のようなものである。一部字札が欠損しているものには仮に拙訳を付した。

英語格言和英かるた③
英語格言和英かるた③
英語格言和英かるた②
英語格言和英かるた②
英語格言和英かるた①
英語格言和英かるた①

 

 

「英語格言和英かるた」(仮題)(制作者不明、明治中期)

 

「壱銭(いつせん)の才(さい)ありて壱円(ゑん)の愚(おろか)

 Penny wise pound foolish.(ペネー ワイズ ポーッド フーリッシ)」

 

「ろくでなき内袷(じゆばん)も無(な)きにはまさる

 A bad shift is better than non.(エ バッド シヤート イズ ベター ザン ノーン)」

 

「始(はじ)め正しければ終(おはり)り正し

 Beginning right end is right.(ビキニング ライト エンド イズ ライト)」

 

「濁(にご)れる水は漁穫(うをとり)多し

 In muddy water is the best fishing.(イン モッデー ウオーター イズ セ ベスト フイシング)」

 

「正理(ほんみち)は最良(さいりやう)の楯(たて)なり

 Truth is the best buckler.(ツルース イズ ゼ ベスト ボックレール)」

 

「空腹(へりたるはら)は最良(さいりやう)なる美(び)こふなり

 Hunger is the best sauce.(ホンガー イス セ ベスト ソース)」

 

「雞屋(とりべや)も貧(ひん)人には宮殿(きうでん)なり

 A hut is a palace to a poor man.(エ ホット イズ エ パラス ツー エ プーワ メン)」

 

「智識(知識)は何程(なにほど)負(お)ふも重(おも)からず

 Knowledge is no burden.(ノーレッヂ イズ ノー ボルデン)」

 

「理(り)なく得(え)し財(ざい)は理(り)なく失(うしな)ふ(仮訳)

 Evil gotten evil spent.(エヴィル コットン エヴィル スペント)」

 

「盗人(ぬすびと)に鍵(かぎ)を渡(わた)すな

 Do not give lobber(robber?)a key.(ドウ ナット ギーヴ ロッバー エ キー)」

 

「類(るい)は友(とも)を呼(よ)ぶ

 Same nature call the same nature.(セーム ネーチユーア コール ゼ セーム ネーチユーア)」

 

「高慢(をうへい)は零落(れいらく)の基(もと)」

 Pride comes befor ruin.(プライド カームス ビフヲワ ロン)」

 

「黄金(わうこん)在(あ)らされば交(まじは)りなし

 No money no friend.(ノー モネー ノー フレンド)」

 

「神(かみ)は自(みづ)から助(たす)くる者(もの)を助(たす)くべし

 Aid yourself and God will aid you.(ヱイド ユワーセルフ エンド ゴッド ウイル エイド ユー)」

 

「良(よ)からぬ稽古(けいこ)は覚(おぼ)えやすし

 An evil lesson is soon learned.(エン エヴィル レッスン イズ スーン ロールンド)」

 

「高(たか)き枝(ゑ)に棲(すめ)るも安全(あんぜん)ならず

 The high branch is not the safe roost.(ゼ ハイ ブランチ イス ノット ゼ セーフ ルースト)」

 

「料理人(れうりにん)多(おほ)きに過(すぎ)て肉(にく)煮損(にそこな)ふ

 Too many cooks spoil broth.(トウー メネー クークス スポイル ブロス)」

 

「其(そ)の皮(かわ)を売(う)る前(まへ)に熊(くま)を捕(とら)うべし(仮訳)

 Catch the bear befor you sell his skin.(カッチ セ ビーヤ ビフオワ ユー セル ヒス スキン)」

 

「都合(つごう)よき品物(しなもの)は賣(う)る事早(はや)し

 Good ware makes quick market.(グード ウエーヤ メーキス クイック マーケット)」

 

「猫(ねこ)が居(お)らねば鼠(ねづみ)が騒(さは)ぐ

 When the cats is away, the mice play.(ホエン ゼ カット エウエー ゼ マイス プーレー)」

 

「半可通(なまいき)より知(し)らぬがまし

 To be unknown is better than illknown.(ツー ビー オンノウン イズ ベター ザン イルノウン)」

 

「懶怠者(たいたもの)には閑暇(ひま)なし

 Idle folks have the least leisure.(アイドル フヲルクス ハヴ ゼ レースド レージユーア)」

 

「死去(むなし)き跡(あと)でのお醫者(いしや)さま

 After death the doctor.(アフター デイース ゼ ドクトル)」

 

「外見(うはべ)て判(はん)ずる勿(なか)れ

 Never judge from appearance.(ネーバー ゲヨッヂ フロム アッピーレンス)」

 

「生(ゐき)て居(ゐ)る間は望(のぞ)みあり

 While there’s life there’s hope.(ホワイル ゼヤス ライフ ゼヤス ホープ)」

 

「皆(のこら)ず握(にぎ)らんとせは皆(み)な失ふ

 Grasp all lose all.(グラプス オール ロース オール)」

 

「贈(おく)り物(もの)は些少(さしょう)なれど想(おも)ふ心(こころ)は大(だい)なり(仮訳)

 The gifts is small but love is all.(セ ギフト イズ スモール バット ローブ イズ オール)」

 

「苦(くる)しみなければ得(う)る事(こと)なし

 No pains no gains.(ノー ペインス ノー ゲインス)」

 

「約束(やくそく)多くして遂(とぐ)る事(こと)少なし

 Promises much but performs little.(プロミーセス マッチ バット ペルフォームス リトル)」

 

「學(まなば)ざれば知(し)る事(こと)なし

 Learn not and know not.(ロールン ノット エンド ノー ノット)」

 

「學文(けいこ)をなすに老(おひ)たりと云(いふ)事(こと)なし

 Never too old to learn.(ネバー トウー オールド ツー ロールン)」

 

「不用(ふよう)な物(もの)はなくならず

 Bad thung(thing?) never dies.(バット シング ネバー ダイ)」

 

「幸福(こうふく)は剛毅(ごうき)にあり

 Fortune favour the brave.(フヲルトン ファボーア ゼ ブレーブ)」

 

「嬰児(えうじ)は母(はゝ)の錨(いか)りなり

 A babe is a mothers anchor.(エ ベベー イズ エ マーザーズ アシクル)」

 

「手遅(てのろ)き仕事(しごと)も為(な)さる(ぬ?)に勝(まさ)る

 Better late than never.(ベター レート ザン ネバー)」

 

「新(あたら)しき箒(はうき)は能(よ)く拭(ぬぐ)ゑり

 New brooms sweep clean.(ニウー ブルームス スウイープ クーリーン)」

 

「危難(さいなん)すぎれば神(かみ)を忘(わす)れる

 Danger past, God forgotten.(ダンヂヤー パスト ゴッド フヲルゴツトン)」

 

「美麗(きりやうよし)の顔(かほ)は化粧(けしやう)に及(およ)ばず

 Fair face need no paint.(フアイヤ フエース ニード ノー ペイント)」

 

「故事(ゆゑこと)に拠(よつ)てはつんぼになれ

 He is deaf of that ear.(ヒー イズ ディーフ オブ ザット イーヤ)」

 

「酩酊中(めいていちう)は智恵(ちゑ)は留守(るす)

 When drink enters wisdom depart.(ホエン ドリンク エンタース ウイスドーム デパート)」

 

「水(みづ)静(しづ)かなれは抵(そこ)深(ふ)かし

 Still water have deep bottoms.(スチール ウオーター ハブ デイープ ボトムス)」

 

「十人(じふにん)よれば十(と)いろ

 So many heads so many minds.(ソー メネー ヘッヅ ソー メネー マインヅ)」

 

「笑顔(ゑがほ)は良(よ)き語(かた)り部(べ)(仮訳)

 The face is good tell tale.(セ フエース イス グード テル テール))」

 

「一度(ひとたび)言はんとせば再度(ふたたび)聞くべし

 Hear twice befor speak once.(ヒーヤ トワイス ヒフヲーワ スピーキ ワン)」

 

「最(もつと)も高貴(こうき)な復讐(ふくしゆう)は赦(ゆる)しにあり(仮訳)

 Forgiveness is the noblest revenge.(フオルギーブネス イズ ゼ ノーブレスト レヴエンヂ)」

 

「先途(せんど)の楽(らく)を思(おも)ひ仕事(しごと)を続(つづ)けよ(仮訳)

 Think of ease but work on.(スィンク オブ イース バット ウヲーク オン)」

 

「為事(すること)廣(ひろ)ふして舌(下)短(みじか)きを最良(さいりやう)とす

 Wide ears and short tongue is best.(ワイド インヤズ エンド シヨルト トング イズ ベスト)」

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