平成三十年(2018)十二月にこのウェブを一応完成したが、その後、いくつかの進展があってさらに補完した。作業に手間取ったので、平成年間(1989~2019)に完成させるという予定が実現できず、令和初年(2019)に入ってしまった。

かるた史研究のうえで特に重要な進展は、平成三十一年(2019)正月に起きた、百人一首歌合せかるたとしては最古級、ほとんど絵合せかるた誕生直後の時期の物品史料「吉田家旧蔵百人一首歌合せかるた」の出現と、令和初年(2019)六月に始まった東京、サントリー美術館の「遊びの流儀 遊楽図の系譜」展の開催である。私は双方ともに近くで閲覧、調査する機会があり、研究を深めることができたので、その成果をこのウェブ中の何か所かで加筆した。研究面では大きな進歩になったと思う。また、平成自由花札の一覧表については、平成三十一年(2019)四月末日までに発行されたものを数点補充して、表題通りに平成年間(1989~2019)の全期間をカバーすることができた。自由な花札の創造は令和年間になっても続いているが、このウェブでの蒐集と展示は一応ピリオドを打たせていただく。令和のことは令和の人に任せたい。

他方で、このウェブサイトは、何しろ膨大な内容のものであり、不十分な記述、不正確な表記が散見され、それを正す作業が急がれた。研究者の研究は日進月歩であり、以前の自分が犯した誤りを正すことにためらいはないが、誤解を与えてご迷惑をおかけしてきたであろうことには、より正確な情報を提供して謝罪することしかできない。これまでに寄せられた厳しいご批判、ご叱責に深く感謝し、引き続き今後のご指導を喜んでお待ちしたい。

一方、平成三十年(2018)六月の開館以降に国内外からの取材や問い合わせがあり、メモを作って対応している場合もあるので、このウェブ上に新しいページを作ってそれを掲載することにした。その一つとして、「大人のかるた文化考」を載せた。これは、元々はUCカードのPR誌『てんとう虫』の平成二十九年(2017)一月号に寄稿した文章であるが、令和になってから書き足した。歴史社会は遠い過去にあるのではなく今の世のすぐそばに息づいていること、両者を別け隔てている壁のドアは通常は固く閉じられているが何かの拍子に開かれて両者が通底すること、そのタイムトンネルを通れば歴史社会の人々と親しく触れ合えることを書いた。拙文であるが、かるた、カルタという江戸期以降の日本文化史の通奏低音のような遊技の理解に役立てばうれしい。暇な時にでもお読みいただければ幸いである。

令和元年(2019)八月   日本かるた文化館 館長

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