絵合せカルタ史の研究で次に生じたのは、絵画史料を駆使する江戸時代の狂言史の研究者、藤岡道子と私による「狂言かるた」の研究[1]である。この研究では、福岡県大牟田市の市立三池カルタ・歴史資料館蔵の「狂言かるた」[2]が活用された。藤岡は以前からこれの研究に関心を示していたが、肝心のかるた札で利用できるものに恵まれず、わずかに以前に京都市の古書店、思文閣の目録に掲載された数枚の図像を見るにとどまっていた。そこに、三池カルタ・歴史資料館からの資料提供があり、私からも、カード史研究の世界的権威のシルビア・マン旧蔵の狂言かるたと、清水晴風の手控え帳にある数点の模写画像の史料を提供したので、研究が前進した。三池カルタ歴史・資料館蔵のかるたは江戸時代前期(1652~1704)のもので、五十対・百枚の絵札が完揃いで保存されており、史料価値が高い。狂言かるたを狂言史の中で位置づけて解析するのは藤岡の研究であり、私としては狂言かるたを絵合せかるた全体の歴史の中に位置づけることを試みた。その詳細は、3-2で説明する。

狂言合せカルタ
狂言合せカルタ
(大牟田市立三池カルタ・歴史資料館蔵、
江戸時代前期)
狂言絵かるた
狂言絵かるた
(『思文閣古書資料目録善本特集六』、
江戸時代前期)

[1] 藤岡道子「新出『狂言絵合せかるた』絵札を読む」『藝能史研究』二百十六号、藝能史研究會、平成二十九年、四五頁。

[2] 大牟田市立三池カルタ記念館『図説カルタの世界』、平成十四年、十七頁。

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