(七) 中国国外に残る花牌麻雀

花牌(ベトナム)
花牌(ベトナム)

花牌インフレの牌はゲーム用品としては衰退しており、調査が困難である。できれば中国国内でこれを遊んでいる地方を発見して記録を残したいと思っているが、期待薄である。 ところが、ベトナムには、今日でもなお百六十枚一組の麻雀牌が残されている。「花牌」は全部で二十四枚あり、「春」「夏」「秋」「冬」、「梅」「蘭」「菊」「竹」、「一皇」「二皇」「三皇」「四皇」、「一后」「二后」「三后」「四后」、「筒」「索」「萬」「総」、「喜」「元」「花」「合」が各一枚ずつある。このうち「一皇」「二皇」「三皇」「四皇」、「一后」「二」「后」「三后」「四后」は他に例がなくベトナム麻雀牌を識別する鍵である。

タイには、「花牌」が都合三十二枚、これに通常の牌百三十六枚と予備の白牌四枚を足すと一組百七十二枚という巨大な数の牌がある。「花牌」は「春」「夏」「秋」「冬」、「梅」「蘭」「菊」「竹」、「漁」「樵」「耕」「読」、「琴」「棋」「書」「画」、「官人」「聚宝盆」「釣人」「魚」、「猫」「鼠」「鶏」「百足」、「筒」「索」「萬」「総」、「喜」「元」「花」「合」である。これらをすべて使う技法もあるが、通常は幾組かを除外して使う。あるいは、遊技への参加者の出身地に合わせてなじみのある牌に絞って使うのであろうか。また、同じくタイに、広東省出身者向けに「春」「夏」「秋」「冬」、「梅」「蘭」「菊」「竹」、「筒」「索」「萬」「総」、「喜」「元」「花」「合」と「花牌」が一六枚のものがある。

花牌(マレーシア)
花牌(マレーシア)

マレーシアの牌も枚数が多い。タイでマレーシア、シンガポール向けに製造されている牌では、「花牌」は「春」「夏」「秋」「冬」、「梅」「蘭」「菊」「竹」、「猫」「鼠」「鶏」「百足」、「飛」(四枚)、「顔の絵」(四枚)、で合計二十枚である。香港製では「花牌」は二十八枚であり「春」「夏」「秋」「冬」、「梅」「蘭」「菊」「竹」、「漁」「樵」「耕」「読」、「琴」「棋」「書」「画」、「猫」「鼠」「鶏」「百足」が各一枚、「飛」と「顔の絵」が各四枚ある。マレーシア製の麻雀紙牌も「花牌」が二八枚である。「猫」「鼠」「鶏」「百足」が全員に共通のボーナス牌で、「春」「夏」「秋」「冬」、「梅」「蘭」「菊」「竹」、「漁」「樵」「耕」「読」、「琴」「「棋」「書」「画」は風牌扱いのボーナス牌であろう。「飛」と「顔の絵」はジョーカー牌である。

シンガポールはかつて麻雀牌を盛んに生産していて、「一索」の鳥の形、索子の形、漢字の彫り方、風牌の濃紺の彩色、紙箱の使用などに独特の特徴があった。この頃のものに、「花牌」が「春」「夏」「秋」「冬」、「梅」「蘭」「菊」「竹」、「漁」「樵」「耕」「読」、「琴」「棋」「書」「画」の十六枚のものと、「春」「夏」「秋」「冬」、「漁」「樵」「耕」「読」の八枚のものがある。但し最近では生産が衰退しており、マレーシアの麻雀牌を使っていることが多い。

こうして見ると、広東省、ベトナム、タイのあたりに「花牌」として「筒」「索」「萬」「総」、「喜」「元」「花」「合」を共有する地域があり、マレーシア、シンガポールは「飛」と「顔の絵」を共有していることが分かる。このように南方の麻雀牌に「花牌」がなお豊かに残されている理由は、清朝の時代に中国の遊技文化の影響が及び、その後、中国本国では技法や遊技具の改革が進んだのに、辺境の地域では古いままで継承されたからであろうと思われる。文化の伝播ではよく生じることであるが、昔の麻雀の姿を目にすることができるのはありがたい。

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