麻雀牌が語る麻雀の歴史 おわりに 本書をまとめ終えて、ある種の感慨がある。物品史料を駆使して麻雀の歴史を再検討する。その結論が、以前に誰かが唱えていた旧説であっても一向にかまわない。私が求めているのは、既成の麻雀史が描けなかった新説の提示ではなく、麻雀遊技の歴史について、今後、多くの研究者によって研究が積み重ねられていく基礎となる、「歴史学」のレベルに... 館長
麻雀牌が語る麻雀の歴史 五 花牌の盛衰史 (一) 聴用牌・財神牌が花牌の起源 花牌(聴用) 文化大革命後、一九七〇年代以降の中国で発行されている標準的な教則本の類に依れば、花牌の歴史は次のようなものとして理解されているようである¹。 昔、初期の麻雀骨牌のセットに、勝負のスピードアップと刺激の増進を狙って、「聴用」と二文字書かれた牌二枚と「財神」の姿を描いた牌二... 館長
麻雀牌が語る麻雀の歴史 四 日本に伝来した麻雀牌 (一)麻雀伝来の紀元前 日本の麻雀史というと、これまでの論考は例外なく夏目漱石の目撃証言から始まって、大正年間の日本上陸を述べるところから始まる。そうした記述は受け売りに次ぐ受け売りの連続でマンネリ感は相当に色濃い。実直に調査して、何か新しい史料を発見したという報告が待たれているのではないか。そんな思いが溜ってくる。 ... 館長
麻雀牌が語る麻雀の歴史 三 「自由麻雀」時代の麻雀牌 (一) 辛亥革命と自由麻雀の時代 バブコック「自由麻雀」牌 麻雀博物館の収蔵品の中に、一九二〇年代にジョセフ・バブコック(Joseph Bubcock)がアメリカに輸出した麻雀牌で、四枚の「一筒」牌の各々で、筒子の中央に「自」「由」「麻」「雀」と彫り込まれたものがある。たまたまこのタイプのものがモデルになってオランダで... 館長
麻雀牌が語る麻雀の歴史 二 一九世紀の中国麻雀牌(プロト・マージャン) (一) グロバーの麻雀牌の発見 二一世紀の始めにアメリカのニューヨーク市で、これまでの麻雀史の研究を根本から変えるような大発見があった。一八七〇年代前期に、あるアメリカ人が二組の麻雀牌を中国から持ち帰ってきていた史実が、その際の麻雀牌そのものの再発見によって再確認されたのである。その人の名前から、ここではグロバー牌と呼... 館長
麻雀牌が語る麻雀の歴史 一 麻雀牌が語る麻雀史への道 (一)中国のカルタ、紙牌の発見 本書で私は、「麻雀牌が語る中国麻雀骨牌史」と「麻雀骨牌の日本への伝来史」について触れる。日本については、第二次大戦以前の時期を扱うことにする。この時期、つまり大正時代と昭和前期はあわせて、大きく括っても三十年程度の期間であるが、これに対して、昭和後期、つまり第二次大戦後の麻雀の歴史は、も... 館長
麻雀牌が語る麻雀の歴史 麻雀牌が語る麻雀の歴史 「三猴燙猪(三匹の猿が肥えた豚をゆでる図)」猿は足で紙牌の不正な交換をしている:19世紀中国版画 【目次】 一 麻雀牌が語る麻雀史への道 (一)中国のカルタ、紙牌の発見 (二)麻雀古牌の蒐集 (三)「揺れ虫」図柄の古牌が麻雀牌の歴史を語り始めた (四)「一索進化論」の麻雀界へのデビュー 二 一九世紀の中国麻雀牌(プロ... 館長
MONOGRAPH 「南蛮カルタ」・450年後のよみがえり 江橋 崇 English/Japanese ボハルデのドラゴンカルタ・整列済 一 よみがえった「南蛮カルタ」 ベルギーカルタ博物館HP 今年、2021年に、日本のカルタ史研究は大きく飛躍できた。これまで全く謎のままであった16世紀後半に日本に到来したヨーロッパのカルタ、つまり「南蛮カルタ」の実物が、450年後になってベ... 館長
MONOGRAPH Namban Carta: Resurrected after 450 Years TakashiEbashi English/Japanese 1. Resurrection ofNambanCarta Home-Page : Nationaal Museum van de Speelkaart The year2021marked aquantum leap for research on the... 館長
館長より 「かるた文化通史」完成 この度、日本かるた文化史の近代編をアップして、安土桃山時代に始まる日本のかるた文化の歴史を書きあげました。もっとも偉大な先行業績である山口吉郎兵衛氏の『うんすんかるた』が上梓されてから半世紀以上の月日がたっています。その後の先人たちの業績にも学び、辛口の私のコメントも取り混ぜて、なんとか「かるた文化通史」を完成できたこ... 館長
五 かるた、カルタ史研究の高まり (五)児童遊戯史研究、玩具史研究におけるかるた史の軽視 さらに、こうした民俗学の偏向に影響されているのか、遊戯史、玩具史においてもかるたに関する研究が少ない。ここでは二例についてだけ触れておこう。第一は共立女子学園教授で児童文化を専門としていた半沢敏郎の『童遊文化史』である。同書はB四判四冊で合計二千三百頁を超える大著で、別冊として画集一冊が附置されている。半沢はここでかる... 館長
五 かるた、カルタ史研究の高まり (四)民俗学におけるカルタ文化、かるた文化の無視 私は、『ものと人間の文化史173 かるた』で、民俗学における賭博系の遊技の黙殺を批判した。ここで、民俗学におけるカルタ文化、かるた文化の取り扱いについて繰り返しになるが簡単に触れておきたい。 柳田國男に始まる日本の民俗学は、当初は民間の好事家の活動のように見えたが、その後、社会的な評価が高まり、今日では大学などの研究機... 館長