二 「舞台芸能かるた」の変化 (一)「役者かるた」の登場 江戸時代中期、享保年間(1716~36)以降に「舞台芸能絵合せかるた」に大きな変化があった。歌舞伎役者への関心が強まった享保九年(1724)に、大名の柳沢家の重臣の家系に生まれて文武両道に秀でていた柳沢里恭(さととも)(淇園(きえん)、当時二十歳)が甲府と江戸での彼自身の見聞を記した『ひとりね』を表した。同書には、博奕... 館長
一 「舞台芸能絵合せかるた」の歴史 (六)「舞楽かるた」、「謡曲かるた」 舞楽合せかるた(所蔵者不明、『江戸の遊戯』) 以前に『王朝のあそび』で、「舞楽かるた」が紹介された。舞台芸能の絵合せかるたにいかにも似つかわしい美麗なものであり、内容は、「納曾利(なそり)」「採桑老(さいしゅうろう)」「貴徳樂(きとくらく)」「胡蝶(小手府・こてふ)」「遣城樂(けんしやうらく)」「白濱(はくひん)」「胡... 館長
一 「舞台芸能絵合せかるた」の歴史 (五)シルビア・マン旧蔵「狂言絵合せかるた」 狂言合せかるた (シルビア・マン旧蔵 、江戸時代前期) ここで、もう一点、興味ある「狂言合せかるた」を検討しておきたい。現在、私の手元に、以前にイギリスのカード史研究者シルビア・マンから友情の証だとして私に贈られた江戸時代前期(1652~1704)の「狂言絵合せかるた」のカード四枚がある。いずれも狂言舞台での登場人物の... 館長
一 「舞台芸能絵合せかるた」の歴史 (四)「狂言絵合せかるた」の図像学的検討 ついで、カード上の図像の検討に入ろう。狂言の舞台図については『絵入狂言記』の挿画が基本的な史料になるが、そのうち「狂言絵合せかるた」と共通するものは「悪坊」「麻生」「粟田口」「伊文字」「氏貞(内沙汰)」「伯母酒」「柿山伏」「笠之下(地蔵舞)」「喜参倍(茶子味梅)」「薩摩守」「宗論」「二千石」「末廣」「槌(宝之槌)」「茶... 館長
一 「舞台芸能絵合せかるた」の歴史 (三)三池カルタ・歴史資料館蔵「狂言絵合せかるた」 このかるたの書誌的なデータの説明から入りたい。このかるたのカードは縦七・九センチ、横五・四センチで・、表紙(おもてがみ)は金無地の紙、裏面も同じく金無地であるが微妙に色合いが変化させられており、「縁返し」の細工が施されている。枚数は五十対・百枚で、その他に「四の十二 五十番」と書かれて所蔵印の捺されたカードが一枚あり、... 館長
一 「舞台芸能絵合せかるた」の歴史 (二)舞台芸能を主題とする「絵合せかるた」 それはさておき、ここでまずとくに注目するのは、この『うんすんかるた』所載の「絵合せかるた」一覧の最上部に掲げた、寛永期(1624~44)のものとされる「能狂言絵カルタ」である。能、狂言、舞楽などの舞台芸能を描いたかるたは、江戸時代後期(1789~1854)に登場した、歌舞伎の舞台や役者を描いたかるたの始原の姿、「舞台芸... 館長
一 「舞台芸能絵合せかるた」の歴史 (一)江戸時代初期、前期の「絵合せかるた」 前章の3-1では、江戸時代初期(1603~52)、前期(1652~1704)にかけて、年号でいえば寛永年間(1624~44)から元禄年間(1688~1704)の時期に、動物、植物、器物、人物、能狂言などの様々な主題別に、一対・二枚ごとに同一の物ないし人などを主題にした図像があるカードがあって、それが数十対で一組になって... 館長
四 四枚構成の「絵合せかるた」の遊技法の特徴 (三)四枚構成の「絵合せかるた」の紋標 こうした四枚絵合せかるたの発達史を想定してみると、元禄年間(1688~1704)よりも以前の江戸時代前期(1652~1704)にすでにフィッシング・ゲームが存在していたと理解することは難しい。フィッシング・ゲームは、四枚絵合せかるたというかるた札を使う遊技法である。したがって、四枚絵合せかるたの登場以前の時期に「プロト... 館長
四 四枚構成の「絵合せかるた」の遊技法の特徴 (二)「役」の成立を競う遊技法の発達 元禄年間(1688~1704)以降に生じたと思われる絵合せかるたのデュプリケイション、四枚絵合せかるたの誕生がもたらした大きな変化についてまとめておきたい。 四枚絵合せかるたは、一つの紋標が四枚の札で構成されており、そのうちの一枚の手札で場札として展開されている同じ紋標の札を釣り取るゲームである。その際に、札の図像に精... 館長
四 四枚構成の「絵合せかるた」の遊技法の特徴 (一)かるた札の図像と配点の差別化、札の身分化 四枚絵合せかるたの登場によって、かるたの遊技法が大きく変わったが、その中心に「役」の変化があった。もともと、貝覆や江戸時代初期(1603~52)、前期(1652~1704)の二枚絵合せかるたには、札の特別な組み合わせや使い方に応じた「役」というものの存在が確認できていない。他方で、海外から伝来のカルタの遊技では、「読み... 館長
三 一紋標・四枚の「絵合せかるた」の歴史 (六)「やまと絵」の本流、土佐派の絵師が描く絵合せかるた こうして、絵合せかるたを江戸時代の日本の美術史の中でどう理解するのかという課題が浮上するのであるが、それはすなわち、日本におけるミニアチュール美術史の理解に直結する。これに触れることは、この方面にずぶの素人である私には、足もすくむ課題である。無知から生じる誤りを恐れ、最小限の記述にとどめたい。 まず明らかなのは、絵合せ... 館長