二 『雍州府志』巻七、「賀留多」の解読 (六)「賀留多」第三文節、③遊技法「合せ」 合せカルタ遊技図(「カルタ遊びの図」、立命館大学蔵) 一方、「合せ」に関する「又互所得之札、合其紋之同者、其紋無相同者為負、是謂合(アハセ)、言合其紋之義也。」という記述はこう読める。「また、互いに得たところの札でその紋の同じものを合せ、その紋と相同じものがなければ負けとする。これを合せと言う。言うこころはその紋を合せ... 館長
二 『雍州府志』巻七、「賀留多」の解読 (五)「賀留多」第三文節、②遊技法「読み」 読みカルタ遊技図(「邸内遊楽図屏風」、サントリー美術館蔵) 『雍州府志』の記述は、次に遊技の方法に進む。そこでは、「読み」と「合せ」が紹介されている。読みではすべての札を配分した後、「其為戯謂打賀留多、然後人々所得之札數一二三次第早拂盡所持之札是為勝、是謂讀(ヨミ)、倭俗毎事筭之謂讀。」である。「その遊技をすることをカ... 館長
二 『雍州府志』巻七、「賀留多」の解読 (四)「賀留多」第三文節、①カルタ札の配分法 次が問題の第三の文節である。ここでは、二種類の遊技法を説明している。『雍州府志』は京都の名産品を紹介しているのだから、カルタの説明は第二文節で終わっても良かったのであるが、黒川道祐はしばしば脱線して名産品紹介以上のことを書き加えており、それは同書の社会史史料としての価値を飛躍的に高めている。この第三文節もそういう脱線の... 館長
二 『雍州府志』巻七、「賀留多」の解読 (三)「賀留多」第二文節、カルタ札の「紋標」と「紋標数」 続いて第二文節の「凡賀留多有四種紋、一種各十二枚通計四十八枚也、一種紋謂伊須、蛮國稱釼曰伊須波多、此紋形似釼、自一數至九、第十画法師之形是表僧形者也、第十一画騎馬人是表士者也、第十二画踞床之人是表庶人者也、一種紋稱波宇、蛮國稱青色曰波宇、此紋自一數至九数、第十第十一第十二同前、一種紋謂古津不、蛮國酒盃謂古津不、是表酒盃... 館長
二 『雍州府志』巻七、「賀留多」の解読 (二)「賀留多」第一文節、カルタ札の制作地、制作者、発祥 第一の文節、「賀留多 六條坊門製之、其良者稱三池、以金銀箔飾之者謂箔賀留多、是於繪草子屋造之、元阿蘭陀人玩之、長崎港土人倣之為戯。」である。『雍州府志』は京都の地誌であるので、まず、カルタの制作地が六條坊門(五條橋通)であることを述べ、一般のカルタのほかに、質の高い「三池カルタ」や金箔、銀箔を使う豪華な「箔カルタ」につ... 館長
二 『雍州府志』巻七、「賀留多」の解読 (一)『雍州府志』巻七、「賀留多」 「賀留多」(『雍州府志』、貞享三年) まず議論の基本的な骨組みの問題であるが、対象となるのは、『雍州府志』の中の「賀留多」に関する三百六十三文字の漢文である。研究室はそのサイトの開設当時から長期間にわたって、私が、カルタ史に関する論文や著作で、ここに登場する「合(アハセ)」(以下、『雍州府志』などでの「合」に仮名を付し... 館長
2-2 江戸時代前期の合せカルタ遊技 一 カルタの遊技法「合せ」に言及する史料 江戸時代初期の京都、大坂などには、「合せカルタ」という遊技法があった。だが、その存在を裏付ける史料は少ない。文献では、江戸時代初期(1603~52)の史料で、この遊技法であると特定されるものは未発見であり、寛永年間(1624~44)の末年に刊行された著者不明の『仁勢物語』がこれを扱った最古のものと推定される。これについ... 館長
五 復刻作業の反省 『天正カルタ版木硯箱鑑定書』 2002年7月3日 天 正 カ ル タ 版 木 硯 箱 鑑 定 書 三池カルタ記念館顧問、日本遊戯史学会理事 法政大学教授 江橋崇 最近、東京で、桃山期と思われる天正カルタの版木を用いた硯箱が発見された。以下はその鑑定の概要である。 本品の形状 (1)本品は、1組48枚のカルタを仕立てる版木を用い... 館長
五 復刻作業の反省 (五)批判の背景 山口は、『最後のよみカルタ』の出版以前には、私とはほとんど面識がなかった。それがなぜ突然に牙をむいて吠え掛かってきたのかは奇妙である。それほど深く交際していなかった私にはその理由を判断する十分な根拠はない。ただ、当時、山口が同志社女子大の吉海直人と酒席を共にして、江橋を打倒すれば自分たちが日本一のカルタ史研究者になれる... 館長
五 復刻作業の反省 (四)復元作業批判の登場 この復元作業の完成後しばらくたって、福井県在住の山口泰彦は、著書『最後の読みカルタ』で、私の復元作業への関わりについて批判を書き連ねた。そこで展開された批判の要点は以下の八点に要約できる。 江橋は莫大な浪費をして無意味に版木を復元した。 (二)江橋は復元の用紙選定に際して、現存する滴翠美術館の『天正カルタ』用紙の科学的... 館長
五 復刻作業の反省 (三)「蝙蝠龍」のカルタと「火焔龍」のカルタ このことはさらに、「三池カルタ」の「龍」のカード、その図像の問題に飛び火する。復元「三池カルタ」の「一」のカードには「龍」の図像がついている。それにはヨーロッパの龍の図像に従って蝙蝠のように羽を広げた龍がいる。私はこれを「蝙蝠龍」と呼んでいる。ヨーロッパのカードでも、「龍」のカードは「蝙蝠龍」である。ところが、日本のう... 館長