五 かるた、カルタ史研究の高まり (四)民俗学におけるカルタ文化、かるた文化の無視 私は、『ものと人間の文化史173 かるた』で、民俗学における賭博系の遊技の黙殺を批判した。ここで、民俗学におけるカルタ文化、かるた文化の取り扱いについて繰り返しになるが簡単に触れておきたい。 柳田國男に始まる日本の民俗学は、当初は民間の好事家の活動のように見えたが、その後、社会的な評価が高まり、今日では大学などの研究機... 館長
五 かるた、カルタ史研究の高まり (三)研究者のコミュニケーションの進展 平成期になると、研究者間のコミュニケーションが前進した。「日本かるた館」の活動が低下した後を継いだのは「かるたをかたる会」であり、平成年間(1989~2019)になると「大牟田市立三池カルタ記念館」「大阪商業大學アミューズメント産業研究所」「麻雀博物館」などが設立されて情報交換の拠点となり、「遊戯史学会」「日本人形玩具... 館長
五 かるた、カルタ史研究の高まり (二)史料の蒐集を活用する研究の進展 この時期の研究のもう一つの大きな特徴は、山口吉郎兵衛がそれまでの文献史学の枠を越えて展開した、カルタ類の蒐集を基礎にした研究という方法論の展開である。カルタの各領域に熱心な蒐集家が登場した。「歌合せかるた」には山口格太郎のほかに、「源氏物語カルタ」の中野孝一、「伊勢物語カルタ」の「鉄芯斎文庫・伊勢物語文華館」こと芦澤新... 館長
五 かるた、カルタ史研究の高まり (一)昭和後期のかるた史研究の状況 花札の衰退と裏腹に、花札の歴史を含むカルタ史の研究は盛んになっていった。それはミネルヴァのフクロウは黄昏に飛び立つというヘーゲルの言葉そのままであるように見えた。 本書ではすでに、山口吉郎兵衛、格太郎父子の功績について触れた。『うんすんかるた』の出版は、日本のカルタ史学の状況を一変させて、多くの研究に強い刺激を与えた。... 館長
四 戦後期社会の完結とカルタ遊技 (七)デジタル・ゲームの登場 カルタ遊技の現代を特徴付けるもう一つの大きな特徴は、コンピュータ技術を駆使したデジタル・ゲームとの競合である。それは昭和後期(1945~89)に始まり、平成期(1989~2019)にコンピュータ技術の急速な発展によってテレビ・ゲーム、家庭用ゲーム機を使ったゲーム、パソコンでサイトと繋がるパソコン・ゲーム、そしてスマート... 館長
四 戦後期社会の完結とカルタ遊技 (六)ゲーム・カードとゲーム機の登場 ここで、カルタ類似のゲーム・カードを振り返っておこう。江戸時代後期(1789~1854)以降には、座敷遊び(インドア・プレイ)用のカルタに似たカードが大量に開発された。中には、たとえば幕末期(1854~67)の「夫婦合せ」や「鳥刺しかるた」のようにその座敷遊戯に専用のプレイ・カードと、江戸時代後期(1789~1854)... 館長
四 戦後期社会の完結とカルタ遊技 (五)手作りカルタ、手作り花札の終焉 花札の社会的な沈滞に先駆けて「めくりカルタ」などの賭博系地方札の遊技は衰退し、この種のカードは次々と製作中止に追い込まれていった。同じように、各地方に残っていた地方花札も衰退していった。これにともない、地方のかるた屋の廃業も続いた。徳島県阿波町、山形県酒田市、岡山県倉敷市、岩手県花巻市等にあったかるた屋は消滅し、京阪神... 館長
四 戦後期社会の完結とカルタ遊技 (四)カルタ業界の革新不足 このような競争相手の遊技、ギャンブルの変化、改革と比較すると、かるた、とくに花札の業界での革新がいかにも遅れている。新しい遊技法は登場せず、いつまでも江戸時代から続いている「四光」「赤短」に「猪鹿蝶」では遊技としての魅力が徐々に減少してゆく。たとえば、女性向けの雑誌『婦人倶楽部』の昭和二十八年(1953)新年特大号の「... 館長
四 戦後期社会の完結とカルタ遊技 (三)高度成長期の社会変動とギャンブルの変容 これから、高度成長期の日本における賭博札、花札の衰退について触れなければならない。それは必ずしも心躍る内容にはならないであろう。すでに触れたように、昭和三十年代(1955~64)の高度成長期は花札、賭博札の最後の盛期であった。その余韻は昭和四十年代(1965~74)にも残っていて、まだ、学生や芸術家などもこれで遊んでい... 館長
四 戦後期社会の完結とカルタ遊技 (二)主要なカルタ屋の動向 昭和後期の高度経済成長期は、日本の花札市場で最後のブームの時期であり、昭和三十年(1955)当時は一年に一百万組程度の出荷であったものが、八年ほどたった昭和三十八年(1963)には三百万組にまで増加した。空前の好景気を背景に、全国各地の生産現場、再開発現場で花札が舞い散っていたのである。こうした急激な需要増に対応するこ... 館長
四 戦後期社会の完結とカルタ遊技 (一)かるた業界の変貌 昭和後期のかるた業界では、何社かの新規参入も含めて、さまざまな革新が試みられた。まず、基礎的なデータとして、この時期のカルタ屋を見ておこう。昭和前期(1926~45)以前からの伝統的なカルタ屋で、私が直接に関係者に話しを聞いたことがあるのは次のような業者、あるいはすでに店を閉じた元業者である。なお、断るまでもないが、調... 館長
三 賭博遊技系カルタの 展開 (五)奇術用のカードとトランプ類税 かつて阿部徳蔵は、かるたという遊戯具の世界を、大きくカルタ遊技、カルタ占い、カルタ奇術に三分して体系的に説明した。この優れた先行研究があるので、私も、カルタ占い、カルタ奇術にも関心があったが、カルタ占いに関しては、タロット占いの世界の、他者を寄せつけない独自な発展に圧倒されて早々に撤退した。 『トランプの不思議』(高木... 館長